新必殺技(限定)

桜の咲き始めから花冷えがはじまったようだ。それでも、咲き始めた花の数は、毎日増えていく。おだやかな天気だけど風は冷たい。

今日は、顔をみるなり、なんとなくやる気満々のイメージが伝わって来た。車椅子に乗りたいような顔をしているから「車椅子乗るの?」と訊いてみた。そうしたら、なんと、はっきりと頷いた。

ウン、、、じゃなくて、ウ〜ンッというイメージのスピードで、確実に、はっきりと「頷いた」のだ。これはびっくり。この動きは、始めての動きなのです。

今までも、ブログ上では「頷いた」と書くことは多くあったけど、かつての「頷き」は、アゴを上にむかって、ひょいとかすかに動かす動きで、首の後側の肩のあたりの筋肉を収縮させる動きで生まれる運動のことを指していた。ところが「今日の頷き」は、そのまったく逆。ぼくらの一般的な頷きの形で、アゴを引いて頭を前に少し倒すようなイメージの運動だった。 続きを読む


Happy


病院の東側に、桜の木がある。この桜が病院まわりでは一番早く咲く。この場所は、病院の東側の壁と、隣の敷地との塀の間で、風がこない場所だ。温度が保ちやすい場所なのかもしれない。花は下のほうから咲いている。上の枝は風に影響されるのだろう。

ぼくらは、この狭いスペースで、しばらく花見をした。こうやって、花見ができる、ちょっとしたHappyを楽しんでいた。そのあと公園で、まったり日向ぼっこHappyをしていたけど、日が陰り、風が出てきたからデイルームへと移動した。

デイルームでは、何人かの入院患者さんたちがおやつを食べていた。
あとからいらした一人のおばあちゃんが、歌を歌いはじめた。

「しーあわっせはぁー、歩いて来ない、だーから、歩いて行きました! おわり。」

イェー、ファンキーな表現だ。メロディーは 「だーから歩いて」・・・までで終えて、 最後の 「行きました〜!」 は、勢い良く会話調で言い切るというフェイクを入れた歌唱法。 とても、簡潔で、人を気持ち良くさせるパフォーマンスだ!

ぼくは心の中で「いいね!」ボタンを押した。
人は、ほんのちょっとしたことで、Happyになれるもんだなと一人で声を出さずに笑った。
このくらいの、ちょっとしたHappyが、最高だな。

妻は高校野球を見入っている。
ぼくの頭の中では、ファレル・ウィリアムスの「Happy」が流れ始めた。


桜の記憶


ぼくの家の前は桜並木で、毎年綺麗です。家の前の桜は、まだこれからでちょうど蕾が膨らんでピンク色になってきたという段階です。この時期、妻といっしょに桜をみると、2010年の桜のことを思い出します。それは、妻が倒れた年で、妻は桜をみることがなかった年です。

妻は人生50年目にして、桜をみることのない年がやってきた。見せてやりたい。そして来年は一緒に桜をみることができるだろうか?目は見えているのだろうか?耳は聞こえているのだろうか?と、毎日、微動だもしない妻に声がけしながら、華やかな桜並木を歩きながら、なんとも言葉で表現できない気持ちを味わっていた日々。 続きを読む


親友

昨日、優さんが来てくれました。
妻は、倒れてから何人か友達を作りました。倒れてから3年をベッドで過ごしたのち、52歳を過ぎて、守本さんご夫妻とは出会い、奥様の優さんとはあっという間に親友になりました。

ベッドで生活している人たちにとっては、特別な出会いですが、一般的な目からすると、風変わりな友達ばかりです。妻の友人は、ほかには、国学院大学の柴田先生と奥様。だいたい同世代の友達で、みんな音楽好きなこともあり話があいます。

この出会いは、白雪姫プロジェクトのかっこちゃんからのつながりで広がった出会いですが、妻にとっては、まったく不思議な出会いだっただろうと思います。2013年の春、ぼくが会社を辞めたことをきっかけに、動く範囲が仕事以外へとどんどん広がり、そんな中で障害をもつ方々のつながりで知り合っていきました。 続きを読む


カモン!コブシ

昨日、街中を歩いていたら、コブシが満開に咲いている木を見つけた。おいおい、知らないうちに、こんなに満開か?とびっくりした。病院前の公園のコブシはどうだろうか?今日は天気もいい、風はつめたいけど、日差しが暖かいから、外に連れだせそうだ。午前中に、お墓参りと買い物をすませて、そのまま病院へ。14時到着。

ベッドサイドに顔をだすなり「おい、車椅子のるぜ!」と言うとかすかに目で「わかった」と返事をした。あいかわらず、せっかちな人だというような、ちょっと迷惑そうな顔をしていたけど、天気と気温、風の具合の条件がそろっている、気にしている暇はない。日差しの時間は短いのだ。とっとと、ぼくのジャンパーを着せて車椅子にのっけた。 続きを読む


オモテナシ

5日ぶりの病院。
毎日来ていると、あまり歓迎されないけど、このくらい久しぶりだと、けっこう歓迎してくれる。しめしめ。これもいいものだな。今日の歓迎は、特別な技だった。

左の親指を大きく動かすという動きを披露してくれた。これはすごい。しばらく、見とれていた。はっと思い、携帯ムービーを構えたら、そこからはパッタリ出来なくなった。ぼーっとしている間に、力つきてしまった。

息子たちはなかなか来れないから、ムービーにとってこんなこと出来たと見せたくなる。本当は、見せれても、見せられなくても、本質は変わらないから、それでいいんだけどね。カメラにとるより、その事実をじっくり見たほうがいいと思うけど、見せたい気持ちもある。欲張りなのかな。

これが出来るようになったということは、日々、妻は妻の中で努力をしているということだろう。ちゃんと、自主トレをしているのだろうと思う。

いつの頃からか、言葉もわからなくても、それはそれで、成立しているからいいやという気分になっていたんだけど、最近、たまに何かを訴える目をしたり、口をモゴモゴしたりする。何をいいたいんだろうなぁ。やっぱり、こういうときに、一家に一台、もれなく、柴田先生や優さんがいるといいんだけど、そうはいかない。

きんこんの会にもしばらく行けていない。やっぱり言葉がわかるとうれしいだろうな。今度、優さんにきてもらって、もう一度、指筆談ならおう。妻も、日々努力している。がんばろっと。


8年目の握力

今日、妻の左手に「握力」と呼んでいい力で手を握り返してくるとこうことを3度も体験した。また左腕全体で、力をかけてくることも数度あった。この2月で、倒れて7年が過ぎ、8年目にはいったわけだけど、こんなに時間がたって、回復してくることがあるんだな。

スイッチをためしたのは、6年前のことだ。気持ちだけが早り、まったくまだ無理な時期に、スイッチセットをレンタルしたりしていた。それから、難しいだろうから、その時期がきたら、またトライしようとおもっているうちに、もう7年が過ぎた。

左手の握力が、意思と連動して、継続的に利用できるようになったら、ついにスイッチが使える日がやってくる。ここのところ、端座位をとっているときに、目が開いているときによくぼくをにらんでいる。なんか言いたいことがあるようだ。

たまに、口をもにょもにょと動かすこともある。しかし、どこの部位も、意識的に上手にはうごかせない。そのとき、たまたま、神経がつながって動かせるところを動かすものだから、それは、手だったり、まばたきだったり、口だったりする。

どこでもいいんだけど、コントロールしながら、筋肉を動かせる場所さえあれば、そこからコミュニケーションにいける。しかし、今日くらい握力が出てきたということは、もしかしたら、指筆談に、解りやすさをもたらしてくれるかもしれない。

相変わらず、指筆談はできないけど、またトライしてみよう。
そして、エジソンの名言を信じよう。

私は失敗したことがない。
ただ、10,000通りの
「うまくいかない方法」を
見つけただけだ。


2月の夏空

風も暖かい2月。空には夏の雲が浮かんでいる。こんな小春日和という言葉も似合わぬ、小夏つむじ風みたいな陽気だ。この時期、低体温が不安だったが、今年はあまり低体温には悩まされていない。風に吹かれながら、目を閉じ気持ちよさそうに、キャンプ気分だ。

久しぶりに、アイスコーヒーを3滴、3滴、2滴、と3回も飲んだ。ストローを口にもっていくと、3回とも自分から口をあけた。イヤな時には口を結び、首をふるから、今日は味わってみたいという気分だったのだろう。

「いいね。こうやって、味わえるということは、生きて行く上で、ものすごい楽しみだよね。こうやって、キャンプにも行きたいなぁ。今のままじゃ、ワインも飲めない。ホルモン焼きまでは難しいとしても、ワインくらい飲めるようにしたいよねー」
<ギロリ (・・・バーカ、そんな簡単な話じゃないのよ、と強い目)>
というようなやり取りをしながら、お外にしばらくいた。しかし、風が強くなってきたので、寒くはないけど、目に埃がはいるといやだから、退散した。
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TIME

あまりに普通の話でいやなんだけど、最近、つくづく年齢を感じる。まったく、この年にならないと、わからないことがある。小説だって、作家の年齢以上の人物のことを書くときには、なかなか難しいことがあるはずだ。急に、ある大御所歌手のぼやきを思い出した。若手マネージャーがついたときのあるイベントに、ぼくが同行した食事のときに 「西嶋にはわかるだろ? 年を取るとな、きついんだよ。若いやつらにはわからんのだ。スケジュールの入れ方に手加減がない。体のきつさが、こいつらにはわからん」・・・とぼやいていたことを思い出した。もう7〜8年前の話だ。ぼくもその年齢に近づいた。 続きを読む


シンプルライフ

妻は映画好きです。ドーンとかバーンとかいうのは好きじゃなくて、日本映画のしっとりしたのが好きみたいです。先日、テレビで「ツナグ」をやっていたので録画し、もってきました。

テレビ放送ではOAタイムの調整のため、すでにカットされている部分もあるかと思いますが、それにCMを被せながらチャンネルを変えさせないようにしてある部分などもカットすると、90分くらいになり、妻に見せるには丁度いい時間になります。処置の時間の合間に、マッサージ、端座位、そしてテレビタイムとなるので、これ以上長いと中断して、また続きを見るとかしないといけませんが、90分くらいだと、タイムスケジュールを計画的に調整すれば、通して見ることができます。

映画とかは、必ず一度自分で見てから妻に向いてそうなものを見せます。体が動かせないので、受け身にしかできない環境では、嫌なものも拒否することが出来ません。なので、残虐なシーンや、怖いものは、排除しています。しかし、感情が動かされるものでないと、興味が湧きません。それは、映画も音楽も同じだろうとおもいます。なので、感情のベクトルがフィットしていると思われるもの、また、感情が動かされても「いい刺激」につながるものと判断できるもののみを、見せるように心がけています。そんなわけで、あまりテレビを見ないぼくも、妻のおかげでテレビを見ることがあります。

先日「ツナグ」を見ました。 続きを読む