カテゴリー別アーカイブ: ベッドサイド

楓のしたで雨宿り

病院についたら、今日は、けっこう積極的に挨拶がきた。そして、車椅子は?といくと、すぐにアゴを上にツンツンと突き出して、OKというサインが来た。最近、無視されることが多かったので、ちょっとうれしい。

外にでると、小雨。でも、涼しくて気持ちがいい。いつもの公園の、楓の木の下で雨宿りしようとしばらく、そこで、涼んでいた。そうしたら、急にギロリと睨まれた。「あれ?気に入らなかった? キャンプ気分でいい感じじゃね?」ギロリ・・・あ、このギロリは「バーカ」ってことだろう。

少しは読めよ。・・・という意味からもしれない。そりゃ難しい。 続きを読む

じゃがいも、トマト、未来のえがお

3週間ぶりにインフルエンザも収束し、館内移動もできるようになった。いつもの公園で、久しぶりにゆっくりした。風が少し強めだったから、背中で風をうけるように車椅子をポジションしていたら、やたらと、ぼくを睨んで、首を振る。一般的に言えば「おい、そこにいる木偶の坊、どけどけ」というような非常に悪い態度である。たしかに木偶の坊ではあるが、妻からそこまで言われる筋合いはない。・・・と考えていると、どうも、ポジションとして景色がつまらない。

北西の方向を向いていたその先は、クリーニング工場があるだけだ。景色としてはつまらない。それで、首をグイグイと振って、反対側にポジションを直せという意味だったらしい。木偶の坊のぼくは、そんなにすぐ首振りの理由をわからず、ますます、首振りはしつこくなった。

はいはい。そんなわけで、車椅子を南東へ向けた。風は顔に直接あたるが、気持ちがいいようだ。これ以上強くなれば、少し角度を変えよう。ポジションは納得いったようである。

この向きで、ぼくがベンチに腰掛けてみると、ぼくの足の先、、、写真でいえば、ツマ先から上のところに木が一本。その先の駐車場のさらに奥のところに、小さな畑を発見した。

立ち上がって畑をみにいっていみると、こんなかわいい畑だった。 続きを読む

今、出来ること

かつてよく仕事をしたデザイナーの女性が倒れたと連絡がきた。4月の末頃の話だったようだ。脳幹出血だった。言葉にすることができない気持ちなのだが、ぼくだから出来る考え方というものがあるかもしれないと、頭の中で思いを巡らしている。

ここ2週間、病院の中はインフルエンザ予防のために、他階への移動ができないため、テラスで妻と過ごすことが多い。ここのテラスは、気持ちが良い。そして、視点を変えると、たくさん美しいものが見つかる。先日雨上がりにテラスに出たときには、表面張力を目一杯発揮した葉の上の水滴などを、改めて見つめるてみたり、今日は強い日差しの中でも凛と存在感を見せる、名も知らぬ小さな花などの美しさいに見とれていた。全体をみると、なんとなく、見落としてしまう。だけど、視点を変えて近づいて見てみると、どんなに小さい世界にでも、ゆるぎない自然の力強さが息づいている。 続きを読む

どこでもドアな休日

今日は、いい顔をしている。不敵な面構えというのは、いういうタイプの顔だろう。ぼくの顔を見るなり、首をクイッと横にふる。たぶん、車椅子でどこかに連れて行けという命令だろう。ぼくは、もちろん畏まりましたと車椅子を組み立てはいめた。

看護師長さんに、吸引をお願いし、車椅子にのせようと思うと、なんと、病院にインフルエンザの兆しがり、他階への移動は禁止になっているという。。。。残念。
なんだ、こんなに気持ちのいい日に外に出られないのか・・・・と、その時、思いついた。

「あの、テラスに出ることできますか?」
「テラスは、この階だから、大丈夫です」
「では、テラスに出る扉を開けてもらえますか?」

というわけで、心地のいいテラスを、妻は独り占めすることに成功した。 続きを読む

木陰でアイス


真夏だ。でも、今日はまだカラッとしている。車椅子の背中で強い風をうけながら、公園で1時間。花たちは、打ち合わせ通り、満天星と花水木へとバトンが渡された。そしてぼくらは、3days連続の木陰でアイスだ。妻は合計5mg程度しか食べないから、必然的にぼくが太るプログラムになっている。

ここのところの、とてもわずかではあるけど、自分から口を開き、アイスを食べようとする。この意欲がとても嬉しい。味を感じているという証拠だ。人は食卓を囲むとか、一緒に食事をしたり、飲んだりすること=仲間という意識が生じるのかもしれない。これはとても楽しいことなのだ。

脳神経外科の林成之さんの本に、脳がもともと持っている本能は3つと書かれている。「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」ということだそうだ。「生きたい」は、食事そのものだ。その食事を胃瘻でなく、口から食べられたらどれだけ人生が変わるだろうと思う。

もともと、妻は料理好きだった。この3つの本能が素直に働いていたのだろう。「生きたい」「知りたい」は、美味しい料理のバリエーションを増やした。そして、一緒に食べる家族、友達の「おいしい」という声を聞いて、喜びがうまれる。それは、仲間たちの喜びだ。「生きたい」「仲間になりたい」は家族という最小単位の集まりを作り上げていったんだろう。

木陰でアイスは、ぼくらの7年ぶりの食卓だ。風の中でたべるなら、キャンプで焚き火を見ながら、ホルモン焼きとワインというセットがいいんだが、青空と花水木をみながらのアイスもいいもんだ。

Rehab

人生は勝ち負けではないことくらい知っているんだけど、妻をみていると、この人には負けられないと感じる。左手に、もうすぐ握力と呼んでいい程の力を取り戻してきている。そして、最近では、頷き、唇をとんがらせたYesのサイン、首をふるNoのサイン、の精度が増してきている。

今日は、夕方になってしまったが、少しの時間でもいいから端座位がやりたくて病院に来た。ここまで回復してきているのは、どう考えても、この端座位が大きい。人の脳は、寝てしまえば、眠くなる。やはり、頭を上にし脊髄に頭の重さを支えさせて、やっと脳は働き出すのだ。ベッドに寝ながら本を読んでも5ページも読めはしないのだ。

端座位をしていて、今日もまた初めての技を披露してくれた。頭を前に倒したポジションから、いつも左肩を自分で見るように左回転をしながらヘッドアップするのだけど、今日は、正面から上げて見せてくれた。これはすごい。たまにトライしていたのだけど、最後までやり遂げたのは、今回がはじめてだ。 続きを読む

情熱とお花見

朝、妻の元へいったら、看護師さんが「たぶん今日は大丈夫だとおもいますが・・・」という。??と思っていたら、昨日は38度の熱をだしていたそうだ。今朝、調子がよさそうな顔しているので「今日はお出かけだから、昨日熱をだしてすましたのね?」と声をかけたら、そうだと頷いたそうだ。おもしろい。なかなか、やってくれる。いいセンスだ。

妻の、気合の入った顔はすぐわかる。写真を載せたいけど、お化粧をしていない顔は載せない約束になっている。さぁ、雨は降っているが、寒くはない。満開の花見へでかけよう。

「ただ、ひとつ残念なおしらせがある。息子、嫁、孫達はこないよ」
「・・・(目を少し見開く)・・・」妻は、まだ二人目の孫とはあっていない。今日は、初対面の予定だった。相当、楽しみにしたはずなのだ。

「そうだよな。孫が38度の熱をだした。君の息子は家族を守るために、今日はこないよ。それがやつの今の役目さ。それは正しいぜ。そう思うだろ?」
「・・・・(うん)・・・・」ゆっくりとうなずいた。いい目をしている。
「そうだろ?家族をもったんだ、それが役目さ。いい家族になったな。」
「う」・・・これは、私もそう思うという意味だろう。 続きを読む

時は流れるのか?

今日の午前には、久しぶりの発熱があった。午後には、37度になりおちついていた。目はあきにくいが、ここはひとつ、外の風にあたり、身体全体を冷やしてしまうのがよかろうと考え、外へ連れ出した。風は強いが、風の少ない場所はいくつかあるから大丈夫だ。

背を倒し、サクラを見上げるポジションに車椅子をセットした。たまに薄目をあけてサクラをたのしみながら、風にふかれながら、お昼寝という超贅沢な時をすごした。ぼくは、サクラの写真をとったり、妻のマッサージをしたりしながら、車椅子のまわりをウロウロしていた。

この場所は、サクラは目の前で綺麗だけど、どうも光がイマイチだなと思いながら見上げていたら、雲がきれ、太陽光がサクラをみるみるとてらした。iPhoneですぐに写真におさめた。写真は、時間を切り取る装置だ。この瞬間は、まさにこの瞬間でしかない。

わー、綺麗だねー。。。といいながら、妻のほうをみると、ゆっくりと薄目をあけた。 続きを読む

冒険の春

今日は、病院にくるなり「い」と口を横に少しだけのばして「く」と唇を少し突き出した。しっかりした動きではないけど、きっと、この程度で伝わるはずだという省エネアプローチだ。まぁ、それでも、たしかにぼくには通じたね。もうベッド生活8年目だから、ここらへんの使い分けは、プロだ。

ぼくの薄手のジャンパーを着せて、外へでた。気持ちがいい。風は少しつめたいど、そよ風で、寒いほどではない。そして日差しがやわらかく、暖かだ。いつもの公園で、空を見上げると、コブシが「もうぼくらの出番はそろそろ終わりだ、次は君たちの番だぜ」と言いながら、桜にバトンを渡していた。 続きを読む

新必殺技(限定)

桜の咲き始めから花冷えがはじまったようだ。それでも、咲き始めた花の数は、毎日増えていく。おだやかな天気だけど風は冷たい。

今日は、顔をみるなり、なんとなくやる気満々のイメージが伝わって来た。車椅子に乗りたいような顔をしているから「車椅子乗るの?」と訊いてみた。そうしたら、なんと、はっきりと頷いた。

ウン、、、じゃなくて、ウ〜ンッというイメージのスピードで、確実に、はっきりと「頷いた」のだ。これはびっくり。この動きは、始めての動きなのです。

今までも、ブログ上では「頷いた」と書くことは多くあったけど、かつての「頷き」は、アゴを上にむかって、ひょいとかすかに動かす動きで、首の後側の肩のあたりの筋肉を収縮させる動きで生まれる運動のことを指していた。ところが「今日の頷き」は、そのまったく逆。ぼくらの一般的な頷きの形で、アゴを引いて頭を前に少し倒すようなイメージの運動だった。 続きを読む