月別アーカイブ: 2016年5月

記憶の散歩

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ぼくらのいつもの小さい公園は、コブシが春を告げてから、桜、芝桜、満天星、ハナミズキ、と連続して、今は、サツキがちらほらと咲いているだけで、あとは青々としている。いや、本当は、みどりみどり、している。

今日の風は爽やかで、カラッとしていて、ぼくらにとっては憧れのハワイに旅行にきたみたいだった。ぼくらは二人での海外旅行経験がない。結婚のときは、これがあれだったもんで、飛行機はやめて熱川と修善寺の温泉だった。それからあっというまに家族が増えて、それどころじゃなくなって、気がつけば白髪も出てきて、そろそろ銀婚式にはハワイ旅行だなんていっていたら、その前に、妻が倒れてしまった。

文字でかけば、本当にあっという間の出来事だった。妻は今、ぼくが座っている公園のベンチのすぐ横の木陰で昼寝している。ぼくらにとっては、これが一番ハワイに近い経験だ。ぼくは遊びだけど、会社の人といくプログラムがあって、そこでPADIの免許をとったのと、そのあとアイドルの仕事で2回ほど行った。たしかにいついってもいい気候だった。毎年、この時期のとても気持ちのいい日、こうやって、木陰でぼくらはハワイ気分でまったりしている。 続きを読む

花より団子

左手を握ると、今日はかすかに握り返してきた。握力より、腕相撲のように、肘からしたをグインと下に押しやる力がすごい。たまにあるけど、これほどの力強さは1年ぶりくらいだと思う。

回復とは、いろいろと波があって、偶然できたことが、たまに出来るようになって、少しづつ出来る回数が増えて行くパターンと、マイブームのようにとてもよくやり始めていたことが、パッタリとやらなくなるのとがある。この腕ずもうは、1年ぶりだ。きっと、いろいろと試していて、やることが多くて、忘れちゃうこともあるのだと思う。しかし、ある日急に「あれ?今日、この動きできそう」・・・という感覚がやってきて、そのタイミングがあうと、今日のように、腕をグインとやったりするのだろうと思う。

今日のグインは、比較的、長い時間(・・・といっても、1分ほど)にわたり、数度、力を入れた。ぼくの目をしっかりと睨みながら「ほら、こんなこと出来るの」と言っているのだろう。それを得意げに、何回か連続でやってみせた。ぼくは、目をみながら、頷いて親指を立てた。 続きを読む

ひこうき雲と上弦の月

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光は緑をさらに鮮やかにして、葉っぱはサラサラと風の存在を音に変える。青い空にはお月さま。こりゃ今日は、天国に迷い込んだかと思った。妻は、ちょー気持ちよさそうな顔をして、リラックスしている。時々思うけど、実は今日のようなこんな一時を天国というのかもしれない。

ぼくらは実は天国に住んでいるのだけど、いろいろ経験しなくてはならない。だから、それぞれが色々な役割を果たしながら、互いに影響を与え、経験をしていくのだけど、たまーに、今日みたいな一時をプレゼントしてくれる。つい怠けがちなぼくに、ちょっとだけいい思いをさせてあげようっていう寛大な愛みたいなものだ。

ぼーっと、風にあたりながら、「気持ちいいね」と話しかけると、<うん>と返事がめんどくさそうに瞬きで帰ってくる。「気持ちいいね、ね」というと、しばらくしてから、もー、ほっといてくんない?という顔で<うん>と瞬きをする。お人好しである。 続きを読む

瞳の奥の言葉

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病院の近所の幼稚園に咲いている花をみにお散歩にでた。お散歩に出たのは1週間ぶり。また新しい花が咲いている。「ほら、おもしろいよ。見て、見て。」と妻の車椅子を花の正面にすえた。少し上目遣いで、花を眺めている。ぼくは写真でその花をとって、拡大して、また見せる。ほら、この紫の細長い花びらみたいのが蕾で、この蕾の中から、一つ一つまたお花が飛び出してくる。なんか、1粒で2度美味しいみたいな、そんな花だね。<うん>というように瞬きをしてから、スマホの画面をじーっとしばらく見つめて、首を少しよこに振った。この首振りは<もういいよ>の合図です。

今日のぼくは二日酔いで、アイスクリームを食べたくて、病院の売店でアイスをかった。そのアイスを食べようとして、ちょこっとだけすくって妻の口元にもっていった。どう?食べる?といったら、首を振った。これは<いらない>ってことだろうけど、すぐに判断するのは難しい。というのも、首を縦に動かそうとしたけど、できなくて、アクションが動かしやすい横向きになっている可能性もあるからだ。そこで、慎重に、顔を近づけて、目をみて、もう一度、アイスいらないの?とゆっくりと分かりやすく質問してみた。そうしたら、ゆっくりと、ぼくの目を見つめながら首を縦に動かした。

これはすごい!ぼくらのこの6年3ヶ月の中で、一番はっきりとわかりやすく伝わった<NO>のサインだ。日本語は難しい。いらない?と問いかけると、いらない=Yesのサインとなる。だから、首は縦に動かしたのだけど、その内容は、いらない=NOという意味だ。しかし、とてもよく理解できた。こんなちょっとした1つのアクションだけど、ぼくらの6年3ヶ月の中での1番最高の出来映えだ。素晴らしい返事でした。

場所をうつして、デイルームで「さっきの返事、ものすごく、分かりやすく伝わったよ」と妻に伝えようと、腰をかがめたときに、左膝がコツンと車椅子に当たった。ものすごく痛かった。昨日、酔っぱらって、家のそばで足がよれて転んだところがとても痛かった。イテテテテと言いながら、酔っぱらって転んだ話を妻にしたら、ものすごい呆れた目で長く見つめられた。

この目が表しているのは<ったく、ま~だそんな生活しているの?もう若くないのよ。いい加減にしなさい。>・・・という意味であることはわかっている。しかしぼくは、その目の意味に気づかないふりをして、その必然性について伝えることにした。

昨日さぁ、専門学校の講師の日だったの。んでね、ぼくの講義は、音楽ビジネスっていうのなんだけど、ゲストに友人で、Jungle smileというユニットのリーダーで、作曲家で、なぜか役者までやっている吉田ゐさおさんに来てもらったのよ。彼とは、ぼくが松浦亜弥のハワイでのビデオ作品を作るときに、撮影クルーを編成したときに、なぜか録音マンとして、スタッフに紛れ込んでいたの。ハワイに行ってから、彼がヒット曲をもっているユニットのメンバーで、アーティストだって知って、まいったんだよね。。。。

妻のクールな目・・・<それが何か?>・・・と、ぼくを見ている。

もう12年も前のことだけど、あのハワイでの出会いから、仕事はろくにしないけど、ずっと友達で飲み仲間なんだよね。そのうち、役者になったりして、今は坂上忍さんの舞台にはよく出ているんだよ。

静かに落ち着いた目・・・<それが?>・・・

いや、だからさ、そんなアーティストで、作曲家で、役者で、CM音楽作家で、MAまでを仕事にしていて、あのさ、あのハワイがきっかけで、MAの仕事を始めたんだって、、、あぁ、MAっていってもよく分からないよね。まぁ、それはいいんだけど、、、、だから、行動力がとても大切だという講義をしたかったわけよ。講義が終わったのは夕方だったんだけど、すぐ飲みにいっちゃったんだよね。ま、行動力ってことかな。だってさ、楽しいと思わない?いや、ぼくは楽しかったんだよね。

・・・・<それで?>・・・・

それで、飲みすぎました。

転びました。

膝と肘をすりむきました。

・・・・・・

はい、もうしません。

気をつけます・・・・。

・・・・・・

時として、目は口より雄弁である。

新緑の決意

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昨日は風が強すぎて、外に出れなかったが、今日は、新緑の楓の木陰でそよ風を楽しむことができた。気持ちのいいひと時だ。車椅子の背をグイッと立てて、首の訓練をしながら、ぼくは足首のマッサージしたり、写真を見せたりしていた。楓の写真を2枚とった。空の青と楓の新緑、光と影のコントラストがとても綺麗で、この2枚のどちらが感覚的に好きかを話し合っていた。ぼくは1枚の右上に移る楓の葉のやわらかな光のが気に入っていた。どうしても、こっちだなと思い始めて、トリミングして、画像は荒くなるけど、このやわらかなみどりを強調してみた。

妻は一定時間写真をみると「ハイ次」とでも言うように、微かに首を振る。そうすると、ぼくは「ハイ」と言って、次の写真を見せる。こうして、繰り返し2枚を何度も見直して、この写真のときに、瞬きをした。これは「こっちね」という意味だ。こうして、ぼくらは今日、この楓の木陰で、この写真を選んだ。 続きを読む