月別アーカイブ: 2014年10月

コトバにならない気持ち

星野富弘さんの作品集を妻に見せた時に、はっきりとわかったことがある。一昨日の夜、書きたかったのはこのことなのに、メンチカツの話を書いているうちに忘れてしまった。いつも思いつきで計画性のない人生を歩いてきたのは、こういうことなのだろうと改めて思う。

花の絵が描かれているその上に、星野さんの言葉が縦書きで書かれている。本のページを開いて、妻に見せる。ぼくは妻の右目だけを見ている。本のページの左上方からかすかに上下しながら右へと黒目が移動していくのがわかる。そして、文字を読み終わったあとにに、文字の下に描かれている花の絵をじっくりみる。そして瞬きをする。このページは今読み終わったんだなとわかる。

確かなことだけど、もう一度確かめたくて、また他のページをひらいて妻に見せる。ぼくは妻の右目の動きだけに集中する。また同じ動きが繰り返された。そしてもう一度ちがうページをめくり確認してみる。妻は確実に文章を読み、そして花の絵を観賞して、自分の中に取り込んだ。 続きを読む

メンチカツと伝書鳩

一昨日、中学時代の友人の餃子屋で飲んだ。ここはまるで深夜食道だ。人は誰だって、あまり人に言えない事情をかかえて生きている。そんな奴らが、適度にダメダメな自分をさらけ出しながら、酔っぱらう。酔いにまかせて、その事情がチラリと見え隠れする。みんな、ネタとしては追いかけて、笑うけど、微妙なところはサラリと流す。

たまたまここの店主から、深夜食道のことを教わった。この作家と知り合いの娘が、最近発売された13巻の後半に「あいりちゃん」という名前で出演しているという。思わず、購入してみたら、なんとも面白い。ふーん。人の気持ちの「ココ」のあたりをターゲットにするまんがなんだ。面白いなぁ。・・・と思っていたら、シーズン3が始まるよという話を、となりで飲んだくれていた、インテリっぽい眼鏡をかけた方から教えてもらった。

えっ?これドラマでやるんですか?
うん、小林薫
えっ?稔侍じゃなくってですか?
うん、小林薫
まんが、読んだけど、薫さんでは、若くないですか?
うん、でも小林薫だよ 続きを読む

どんより東の曇り空

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妻の病院へ向う途中、お天気雨にあった。晴れた日差しの中の雨降りの多摩川の橋のうえを東へと向っていたときに虹をみた。どんより曇り空にくっきりと虹が笑ってた。虹っていうのは、いつだって出会うとうれしい気持ちになる。なんだか気分がよくなるものだ。笑っているのは虹じゃなくて、こっちだったのかな。

病院に到着すると、妻はまちかまえていたように、車椅子に乗る気まんまんだった。でも、今日は、風が強いし、いつ雨になるかわからないから、冒険はやめておこう。でも、いつもの公園で10分だけ、強い風に背中をむけて遊んだ。あまり外にいると、低体温になっちゃうから、10分で切り上げた。

毎週火曜日は歯医者さんの日で、ちょうど病院の入り口で担当の歯医者さんと会った。「今日、お口のケアしているときに、左手を握っていたら、すごい力でにぎり返してくれたんですよ!」とびっくりしていた。「そうでしょ。最近、それ、やるんですよ。」なんて、冷静な口調で対応してみた。僕の心の中は、ニコニコしながらの大自慢だった。 続きを読む

ユニクロ大冒険

昨日につづき、今日もお散歩日和。この気持ちいい日を無駄には出来ない。横向きマッサージもそこそこに、すぐに車椅子に飛び乗った。もちろん、飛び乗るのは気持ちの話し。妻もはやく外にいきたいという表情だ。もちろんこれも、ぼくの勝手な気持ちだけど、それ以上推測してもわからないものはわからない。だから、そうしておこう。

いつもの公園で木陰で風を楽しみながらしばらくゆっくりして話をしていた。今週、僕のおばあちゃんの50年祭のお墓参りをしに九州へいくこと。そして来週はそのまま、入院している妻の母を見舞いへ行こうと思っているということ。妻のおばさんのお墓参りもして、妻のおじさんのところへも近況報告をしてこようという計画を木陰でゆっくりと話をした。妻のおじさんにそこから電話をして、アポイントをとった。妻は聞き耳をたてながら、故郷を思っているように感じた。

風が少しつよかった。いつも使っている赤いサンバイザーは、どうも使い勝手が悪い。いけてると思って去年購入したのだけど、車椅子でガタゴトしているとすぐはずれて、気がつくと顔をサンバイザーが覆っている。文句言えない妻は、お面のようにサンバイザーを顔にくっつけて、きっと<何やってんのよ、だめじゃん。>って思っているはずだ。 続きを読む

小さな大冒険

今日はとても気持ちのいい、おだやかなお天気。病院へ向いながら、久しぶりに外に散歩へいけるといいなと思っていた。この気持ちよさを、一緒に味わいたいと、どうしても勝手にぼくの頭の中は散歩の構想がかけめぐる。しかし待て待て、この前もそうだっただろ?体温調整のこともあるから、あまり一人で決め込まないで、妻の体調をみてから、決めればいいことだぜ。。。と、自問自答を繰り返しながら、病院へ到着した。

天井を眺めている妻の表情は、いい顔をしていた。「ハイ」といいながら、オデコを触る。妻はゆっくりと、瞬きで合図する。体調がよさそうだ。「今日はね、外がね、すっごく気持ちいいんだよ。すぐに車椅子だね!いいだろ?」<パチリ>

久しぶりの車椅子、楽しいな、楽しいな。僕はいつも、病院の自動ドアから外に出る瞬間が大好きだ。室内から屋外へと、世界が変わる瞬間に、気持ちのいい風が吹く。この風を感じる瞬間がとても好きだ。それはきっと、妻も同じだろう。目を閉じている日も、肌で感じることができる瞬間だ。 続きを読む

花の応援団

久しぶりに爽やかでいいお天気。今日は妻を外につれだそう!と思い、病院にきた。妻は僕の顔をみるなり、おおきな口をあけてみせてくれた。<ほら、こんな口うごくよ。>って見せてくれているようだ。僕はガッツポーズをとりながら、ベッドサイドに近づいた。「やぁ、久しぶりにいい調子って感じだね。今日は車椅子にのって外にいこうよ!」<・・・・>「あれ?行きたいでしょ?行きたいなら、い・く・と口をしてよ。」ちょっと間があってから<い><う>とやってくれた。

ところがどっこい、人生は思い通りに進まない。このへんな『間』の正体は、低体温の不安だった。よく見てみると、妻はいつもより多く布団がかけてある。それもなんと電気毛布だった。「はーん、これだ。低体温だったんだな。それも、電気毛布とは、かなり低かったんだね。そんな日もある、こんな日もある、それが人生だ。無理するこたぁ何もない、大丈夫だぁー。」などと、話しかけてビデオタイムへと突入することにした。 続きを読む

ゆっくりとどこまでも

妻はここのところの温度変化についていくのが大変なようだ。一昨日は低体温、昨日は発熱と忙しい。しかし、その体とうまく折り合いをつけながら、僕がくると出来る範囲での挨拶をしてくれる。一昨日、気がついたことは、腕の力だ。左手をとったときに、グイッと僕の手を押し戻した。この力は、以前からたまーに繰り出してくる技ではあったが、かすかにその力は強くなって来ているように感じる。それも、以前は一発芸というべきもので、僕を驚かし、喜ばしておいてから、その一回限りの技はそれからひと月も出て来ない、、そんな感じで始まった一発芸だった。それが何度も、何度も、押し返してくる。これは、僕の目には見えないあいだに、彼女の中で何度もチャンスを捕まえては練習をつづけて来て、シナプスを繋げ、新しいく道路を創り出して、トンネル工事を続けて、神経を繋げて繋げて、、、というものすごい工事を続けて今やっと出口が見えたというところなのではないだろうか。トンネル工事だから、何年もかかる、難しい工事だ。それを絶え間なく、怠らず、一人黙々と続けてきたと思うと涙がでる。 続きを読む

反省のポーズ

iPhone4sから6へ乗り換えた。4sで全く問題を感じていなかった僕は、このまま4sを使い続ける予定で、ケースも新品に変えたところだった。それも、お気に入りのケースだった。ツバキアンナさんという現代浮世絵にとりくむアーティストの作品をケースするお仕事の進行をやっていたので、わざわざ10デザインのサンプルを4sで作ったのだ。どれも大変満足な絵柄で、かっこよかった。これで、僕はこれからも4sで行くぞ!という決意でもあった。

ところが、その矢先にOSのアップグレードにひっかかってしまった。
つい、ポチってボタンを押して、yes, yes, yesとポチポチと次に進みながら、アップデートしてしまった。
スピードが遅い、フリーズする、電池はすぐなくなる、、、という事態となり、ダウンコンバートできないという、ビジネス戦略にやられ、渋々6へという道のりとなった。

そもそもこれは、片手で操作しにくい大きさだから、敬遠していたのだ。
きっと落とす。そのうち「あぁ!」って思いながら、きっと手からスルリと、、、 続きを読む

50年前のこと

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今日は、祖母の50回忌法要だった。50年の法要ができるとは、これはお祝だろう。この写真はおばあちゃんのお葬式のときの、50年前のぼくだ。家族みな、なんとも重苦しい顔をしている中、なんかつまらなかったのか、足がしびれていたのかもしれない。

50年前におばあちゃんは他界した。たしか東京オリンピックのときに、テレビを買った。まだわが家は白黒テレビだったけど、ときどき、テレビの左上に【カラー】と表示されているときがあった。ほとんどは白黒放送、その中にカラー放送の番組が、たまにあるという時代だ。

【カラー】って何だろう?画面表示が出て来たり、なかったりする。【カラー】って何だ?って思っていた。東京オリンピックが終わり、幼稚園に行って、帰ってきた12月のある日、おばあちゃんが目を閉じたままで、お医者さんが家に来ていて、みなが深刻な顔をしていた。 続きを読む

にぎやかな月曜日

月曜は台風の雨の中、朝から病院へ来て妻の散髪日だった。このサービスはとてもありがたい。他の病院で髪の毛を切る時は、自分でやったり、知り合いのヘアカットに来てもらったけど、このような障害をもっている人のヘアカットはやはり、おっかなびっくりと言った感じで、とても難しかった。

妻の場合は、首を確保しないとカットできない。この確保役は他の人にまかせた事がない。ちょっとしたミスで、頸椎を痛めてしまうこともありえる。首を確保しながら、ヘアカットする相手のやりたい行動を予想し、相手がカットしやすいようにしながら、頭を支える手の位置をハサミが使いやすいように、移動させていく。こうすることでカットする人はストレスなく、カットしていけてやりやすそうだった。この病院に来て体得した、ぼくの得意技のひとつだ。 続きを読む