紅葉狩り

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妻と紅葉を見に行ったのはいつだっただろう。毎年どこかしら行っていた。忙しくていけなくても、高尾だったり、昭和記念公園だったりと、近場だとしても、必ず散歩しにいっていた。今、ぱっと思い出すのは日光沢温泉の景色だ。温泉といっても、山小屋で、夕飯は17時からだった。

いつも一緒に遊びにいく友人夫婦と、日光沢には3度ほど行った。駐車場からゆっくりあるいて2時間ほどだったと思う。ほんの散歩といった感じだけど、なんせ景色がよかった。妻と友人の奥さんは、宿に先に入り、ぼくら男二人は、その上の湿原まであるいた。空と湿原が広がっていて、ぽっかり浮かぶ雲をゆっくり楽しみ材木を渡してある細い歩道を一周して、宿にもどればもう夕飯だ。

山小屋だから、特別なものはないけど、この「ない」ことの中で、風呂にゆっくり入り、酒をのみ、長い夜を楽しむ。そんなある日のことを思い出した。きっと10年くらい前のことだろう。

病院の前にある小さな公園には、コブシ、桜、ハナミズキ、ヤマモモ、百日紅、どうだんつつじ、イチョウ、と春から秋へと季節を感じさせてくれる。今日、歩きで公園側から病院へ入ってくるときに、このイチョウが「今だよ」とぼくに声をかけてくれた。

曇り空だけど、今日はそんな寒くもなく、湿度もあり、妻と紅葉狩りに外に出ようと、この時に思った。妻に「ごきげんいかがですか?車椅子どうですか?」と聞くとすぐに<い><う>と唇が動いた。もちろんこれは<行く>ということです。久しぶりに、口で返事をしてくれた。

ぼくは外に出てもイチョウのことはまだ内緒にしていた。いつもこのイチョウの逆側から公園を眺めるから、イチョウの紅葉はまだ妻は知らない。いつもの角度からまずはハナミズキを見て、これは何度も紅葉を見ているけど「ほら、一段と赤くなったよね」と話しながら、でも、今日はいつもいく場所へはいかない。次には公園の道路側にある百日紅を見に行った。つい1ヶ月前まで、花をつけていた百日紅も、しっかりと紅葉している。

そして、百日紅の木を正面にみながら、イチョウの葉に光の当たり方も暗く、紅葉がわかりにくい角度から木の下へ侵入し「ほら、百日紅も紅葉するんだね、みてみて」なんて言いながら、意識を百日紅にもっていきながら通り抜けた。

しばらく百日紅をみてから、ゆっくりと時計回りにUターンをすると、妻の右目にはゆっくりとこの紅葉が目に飛び込んでくる。今日のメインイベントはこれだよ、さぁ、存分にどうぞ・・・と、紅葉をみせた。

こういう時に、言葉が読み取れたりするといいなと思う。ぼくには、相変わらず妻の顔の変化もよくわからず、あえて言えば、まぁ、なんつーか、つまらなそうな顔だなと思った。サービスでもいいから、もちっと楽しそうな顔すりゃいいのに、、などと、勝手なことを思いながらも、ぼくなりの演出に自分では満足しながら、しばらく紅葉を眺めていた。

今はそのクールな顔で、紅葉を楽しんもらうことにしよう。そのうち、嬉しそうな顔も出来るようになるだろう。そうすると、楽しいな。今から真央ちゃん観戦だ。1等賞とるときも、この顔で見るのかな?観察してみようっと。

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紅葉狩り」への5件のフィードバック

  1. 清水 広行

    ブログ拝見いたしました。
    じつは、妻が、9月に心配停止で倒れ、現在意識が戻らず、医者にもまず意識が戻ることはないだろうと宣告され、絶望の淵でもがいているところ、貴殿のブログを拝見し、勇気をいぢきました。今後、どのようにしていいのか分からず不安で一杯です。また、アドバイスなどお聞きしてもよろしいでしょうか?ちなみに私の妻は45歳です。

    返信
    1. t.nishijima 投稿作成者

      私は妻が倒れて5年以上たちましたが、それでも、倒れた日のこと思い出すと言葉がありません。こうすればいい、こう考えればいい、などということは言えません。アドバイスになるかどうか、わかりませんが、私も同じような絶望を感じ、社会のセーフティーネットの外に突き落とされた思いを味わいましたので、その経験から一つだけ思ったことを書いてみます。これは、私の場合のお話ですが、ある経験をした人は、みな同じ方向性の精神状態になるのではないかと思うので、そのことを書かせていただきます。

      自分の体はどうなってもいいから、回復してもらいたいと願います。
      そうして、自分の思いや、願いが天に届くようにと、自分の体力や、健康を度外視して、必死に生きる日々が始まりました。ある意味、自分がどんな困難な無理の中であろうが、仕事も看病も、祈りも、すべてをパーフェクトにやりぬこうと思い、無理をして、無理をして、毎日を生きるのです。人間の体は、男性でも30歳をピークに衰えるといいますが、精神は年齢とともに強くなっていきます。なので、精神は肉体を軽々と超えていくために、精神力でさらに肉体を痛めつけながら、誰がどう考えても無理な生活をはじめます。そうやって、私の場合は、定期的に倒れたりしながら、3年ほどは、なんとか無理しながらも、仕事をしながら、毎日のように病院にも、なんとか顔を出しながら、という日々を過ごしてきました。1年もたては、いちいち妻のことなどを他人に伝えることもありませんし、会社も周りも、そのことは、忘れているわけではないですが、その状態が当たり前の「普通」の状態として、私自身ももちろん、そう受け止めて業務は元どうり以上にハードになっていきます。そして、私の場合は、肺炎、肝炎、ぎっくり腰の連続などという状態で、体を壊しました。

      今思えば、これはラッキーなことで、体が悲鳴をあげて「おい、お前、いつまでこんな生活をつつけるつもりだい?」と、体のほうから、ぼくの精神へ抗議してきたので、ぼくの精神も、素直に「そうだね、そろそろ考えなくちゃね」ということで、体を守るために入院し、自宅療養をして、そのまま会社を辞めました。経済的なことがありますから、会社がとにかく継続できることをお勧めしますが、継続するためにも、ようするに自分の健康が一番ということです。

      私は、今日は病院には、普段は3〜4時間おりますが、今日は1時間半で引き上げました。理由は、疲れていたからです。
      妻のことを守り抜くためには、少なくとも、私は妻より長生きをしなくてはならいと考えています。妻が意識をとりもどしてきましたが、まだまだこの先、たとえ体が動かなくても、脳だけ動いているなら、それで楽しいということを見つけたいし、その「楽しい」を少しでも味わってもらいたいし、ともに味わいたいと思っています。そして、力尽きたら、いつかは迎えるその最後の日を、できれば、ぼくが見守りたいと思っています。

      そのためには、暴飲暴食で、ひどい生活をしていきて来た私自身が、健康に気をつけていきていくことが、結局、優先順位の一番ということだという風に、最近は考えています。無理して明日倒れて、1ヶ月病院にいけないより、1週間に1度でも確実にいけたほうがいいです。無理して毎日いって、倒れたら、本末転倒だなと思っています。

      それと、耳元で大きな声で呼びかけないようにしたほうがいいなと思います。反応がなくても「聞こえている」ことを前提として、普通に会話するように、声をかけていくことをぼくはずっと続けてきました。最初1年は無反応でしたが、「聞こえているけど、返事ができないだけ」と捉えて、普通に会話を一方的にしつづけました。今日の出来事、息子たちのこと、友達のこと、なんでも、情報を与えてあげることがいいことだろうと思います。

      ジルボルト・テイラーさんの「奇跡の脳」に書かれていましたが、「聞こえているのに、返事ができない」だけで、耳元で大声を出されるのは、拷問されているくらい大変だったと書かれてありました。なので、少しでも、心地よくすごせるように、今でもできることを、研究して、無理しない範囲で、自分でできることを一つ一つやってみるということが、いいのではないかと思います。

      そんな考え方もあるのだなと、いう程度で、気に入った考え方が何かあれば、参考になればうれしいです。

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      1. 清水 広行

        ありがとうございます。私も、子供達のことを考えると、妻と代わってやりたかったとずっと思っています。妻が
        倒れてから自問自答の日々で、時間も止まったまま、生き地獄のようです。先の見えないトンネルに入り込んだまま、この先どうなって行くのだろう、人生の光は見えてくるのか、不安でたまりません。とりあえず、子供達の世話、仕事、病院となんとかやっているのが現状で疲れも溜まる一方です。この先、穏やかな心になることはあるのでしょうか?
        あと、3か月経つので転院になりますと言われました。転院先は、勝手に決められ、こちらの要望などは聞いてもらえないのでしょうか。先生に、もう目をさますことはないだろうと言われ、気配りのない先生の態度に、先生不審になっています。やはり、考え直して、いろいろ、相談した方が良いのでしょうか?長々と書き申し訳ございません。

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  2. くるりん

    清水さま
    まずは白雪姫プロジェクトを検索してみてくださいね
    意識がないと思われている奥様とのコンタクトを取るためのアイディアがたくさん載ってます
    ここに繋がって下さって、よかったです
    みんなで応援しますからね

    返信
    1. 清水 広行

      ありがとうございます。涙が出る程嬉しいです。白雪姫プロジェクト見てみます。良ければ、今後も相談に乗って頂けますでしょうか。よろしくお願いいたします。

      返信

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