今はただ、ここにいる。

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今日は、37.3度。横向きマッサージで背中を解放し、小さいアイスノンで背中の熱をとったり、うちわで風を送ってみたり、反対向きで同じことをして、それからアイスノンを頭にして、フィギュアスケートカナダ大会2日目の観戦タイムとなった。羽生くんまでは、すごい眼力で見ていたが、羽生くんがおわって、から力尽きたのか、目を閉じてしまった。

体温を計り直してみると、36.7度。80分程度で0.6度の変化だ。どちらにせよ、ちょっと疲れたようだ。目を閉じたり、開けたりしながら、カナダ大会を見終わった。

「どうする?中国大会もあるんだけど、目があかないね。端座位にする?車椅子にする?」と聞いてみると、車椅子がいいという。あー、どうせ、外に行っても、眠っちゃうんだ。知ってるもんね。眠っちゃうに決まっているもんね。・・・って内心思いながらも、明日は雨の予定だし、今日、外の空気にあたるのはいいかなと思って、車椅子にのせて、外へでた。

外は思いの外、風が強かったから、顔を風下へむけて、ほこりが目に入らないようにして10分ほど、外で目を閉じていた。ね、やっぱりね。

それから、2階のデイルームへうつり、風で揺らめく木の枝と葉っぱを30分ほどながめていた。ぼくらは同じ風景をただ眺めている。この写真の車椅子と、丸椅子の関係が、ぼくら夫婦の関係だ。同じ方向をただ見ている。

窓の外では空気が動いている。人からは「風」と呼ばれていて、「風」は強く吹いたり、弱く吹いたり、止まったりしながら、見えやしないけど、枝を揺らし、葉を揺らし、その存在を示している。

ぼくは、そんな事を考えていた。すぐ隣の妻は、ずっとここでは目をパッチリとあけて、見えない「風」を見つめている。

ぼくらは確かに、この二つの椅子のような距離で、同じ方向を眺めているんだけど、妻の思いはぼくにはわからない。何を考えているのだろう?息子たちのことかな。孫のことかな。自分の生きてきた歴史のことかな。いや、きっと何にも考えていなくて、ぼーっと「風」を眺めているだけかもしれない。

ぼくはふと思う。
「夫婦」って一体なんなんだろう?

この二つの椅子みたいなものかな。
何も見えない風をふたり見たりしながら、何でもない時間をただただ過ごす。
何をするわけでもない時間を、こうやって、ただ一緒に過ごす、そんな時間を長く過ごすことが、どうもぼくらの夫婦としての時間のようだ。

何もしない。
今はただ、ここにいる。

そして「ここにいた」になる。
いつか「ふたり」はいなくなる。
そしてきっと、こんなふうに見えない「風」になる。


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